【肖像画の描き方】依頼から完成までプロ画家が徹底解説!

2022年10月1日

こんにちは、画家のクロマトです。
今回は、肖像画の制作過程を解説します。

私に肖像画の依頼をいただく際や
皆様が依頼をいただく際の
参考になりましたら幸いです。

完成形を最初に載せると
このような仕上がりになりました。

【木炭から肖像画制作スタート!】

肖像画の描き方を説明するため
今回、お友達がモデルになってくれました!

本来であれば、依頼料が発生しますが
この記事での説明と
モデル費用と依頼料の相殺ということで
今作を描いています。



これが初手1時間の地点。
最初に行う事は、
軽く面取りをする事です。

小さいサイズであれば
共有いただいた画像の転写が可能ですが

大きいサイズで描くので
デッサンするところから始まります。

なので
そっくりそのまま!にはなりませんが
逆に言えばアレンジも自由です。

元画像そのままではなく
描きやすいように光源を変えたり、
モデルさんとやり取りをしながら
「盛る」事もしていきます。


もちろん、何事にも許可が必要ですので
相手の希望とこちらの希望の
良いバランスを探っていきます。

すべては
「その人の美しさ」を表現するためです。

●面取りとは

そもそも
「面取りをする」って何!?
となりますが

そこの説明もしていきますね。

皆さんは「ポリゴン」をご存知でしょうか?
「ポリゴン」とは
多角形で構成された立体表現の事で

ひと昔前のゲームのグラフィックは
この「ポリゴン」で構成されていました。

円形のオブジェクトが
カクカクに表現されていたり
そんな時代もありましたね。

立体的な絵を描くにあたって
まず最初にやるのが
まさに「ポリゴン」のような考え方で

この画像のように想像し
把握していきます。


人間には千差万別の頭蓋骨があり
十人十色の肉付きがあります。

表情筋の発達具合や
それに被さる皮膚の形状も違います。

木炭とパステルで描く私のスタイルだと
描き進めるにあたって
面取りしても消えていってしまうので
「軽く」やる程度ですが

頭の中では
画像の赤線のような感覚を維持していきます。

目においては
「瞳孔」の位置は決めておきましょう。
黒目は瞳孔を中心に虹彩などが広がります。


【肌に様々な色彩を入れる】

人の肌を橙色だけで表現する
または暖色だけで表現する

絵画の世界において
それを行うと
まるでアンドロイドのようになってしまいます。

なんかゴムっぽいというか
ヌメヌメした感じになるので
「血色」が大事になってくるんです。

なので
私はまず最初に
こういった色彩を置きます。

血の流れる色というのは
単純ではなく
様々な混色の先にあるものなんですね。

中間を薄橙とし
奥行きのある部分には
様々な色彩をまず置きます。

光源寄りの部分には
鮮やかなターコイズブルーや
緑やピンクなど

陰の部分には
暗めの紫や深緑、茶色を置きます。

パステルは画面上で混色していくので
混ぜておきたい色を
一番最初に配置するんですね。


背景の基盤としては
光源側にくらい色を
陰側に明るい色を配置して

画面のメリハリを
この時点で意識していきます。

これが血のかよった肌の
基盤になっていくんです。

【肖像画はここからが本番】

さてさて、ここからは
指でぼかしたり

いわゆる「絵づくり」をしていく
そんな段階に入っていきますよ。

この時点では
まだ元の画像とはかけ離れています。

最初から似せる必要はない
という事を覚えておいてください。

でも、
存在感は出てきたでしょ?

木炭やパステルでは
「描きながら似せ、修正する」というのが
メインの作業になってきます。
(私だけかもしれませんが…)

そのメイン作業に入るのが
ようやくここの段階です。

背景はまだ下地の段階です。
最終的には青色になるのですが
この時点では黄色を置いています。

【肌の色と背景を進める】

顔の描き込みを進め
だいぶなめらかな印象になってきました。

また、背景も
落とす部分と、逆側の水色を大げさに追加。

ここでわかる人はわかるでしょう。
いや顔以外の興味なさすぎん!?と

そうですとも
あぁそうですとも!

服とかやだもん!
難しいもん!


こういうダサい所も
ちゃんと発信していきますよ笑

【描きながら修正していく】

ここから、どんどん形になっていきます。

モデルさんと
逐一制作過程を共有しながら
意見や希望などを伺って
それに沿った修正も加えつつ
完成に近づけていきます。

細かな調整や描き込みも
この時点から始めていきます。

「肌には肌を」という事で
指を使って肌の色を馴染ませます。

不思議な事に
そうした方が
より「肌感」が出てくるんですよね。

そして髪の毛ですが
回りこむ部分をぼかしながら
手前部分は擦筆で1本1本描いていきます。

ソフトパステルは膜が分厚いので
擦筆の先を尖らせて使うと表面が削れ
下地の色が出てくるので

その削れる現象を使って
髪の表現をしていきます。


使用画材につきましては
こちらの記事でご紹介しています。
https://kuromato.com/post-408/

【互いに妥協なしの完成】

私のジャンル、
画風として追い求めているのは
「絵画とイラストの中間」

写実主義ではないし
だからと言って
崩した表現をするわけでもない

絶妙なバランスに居たいのです。

しかし、最低限のスキルはあるので
要望があれば即対応し
依頼側と描く側
その両者にとっての完成を目指します。

様々な意見や指摘をいただきながら
取捨選択し完成を目指します。



絵の依頼をいただく
その絵を描く
というのは

「共作である」と私は思います。
妥協はしたくないし
妥協されたくもないし

その絶妙なバランスを探るのです。


●COSMIC WALTZ


タイトルは『COSMIC WALTZ』
直訳すると「宇宙のワルツ」

背景の左側には
地球の大気と雲

右側には
成層圏を抜けた宇宙と流星

壮大な歴史の中に
今生きる私たち

些細な事に泣き笑い
サイクルの中で踊る

そんなコンセプトで描きました。

また、紫がかった服は
夕暮れの不思議さ

肌にも紫を多めに取り入れ
神秘的で妖しい美しさを表現しました。

そして、目の輝きは
見つめる先の未来が
明るくありますようにという願い

また、モデルさん本人が
この絵を見るたびに
見つめられている自分は
絵の中の自分にとって未来であり

過去の自分にも
ちゃんと見守られているよ
というメッセージを込めています。

【ご依頼の際の注意点】

また、
似顔絵や肖像画をご依頼いただく際の
注意点をまとめましたので
ご参照ください。

1.依頼料について

基本的にはご予算にできる限り沿えるようにさせていただきますが
サイズや制作時間などの関係もございますので
TwitterやBACEよりご相談ください。
お見積もりにつきましては
無料にてお送りさせていただきます。

2.サイズについて

どんなサイズでも承っております。
◯◯号、◯◯サイズ など
規定が様々ありますので
ご指定くださればそのサイズにて制作いたします。

しかし、
小さいサイズであるほど
細かな描き込みは難しくなりますのでご相談ください。

3.ご提供いただく画像について

なるべく鮮明な画像をご提供ください。
また、お送りいただいた画像につきましては
厳重に管理させていただきます。

その他、疑問点などありましたら
お気軽にご連絡ください!

【絵描きさん、みんな仲間!】

私クロマトは、すべての絵描きさんを心より応援しております。
上手い下手も、初心者でも何でも関係ありません。
でも私だって、まだまだ駆け出しの身。
肩を並べて、あなたと一緒に進んでいける事を願っております。
この記事を見ていただいてありがとうございます。

クロマト

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